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「フラット化する世界」で一躍センセーションを起こした、NY タイムズ・ジャーナリストであるトーマス・フリードマンの 2016 年の著作。

「テクノロジー」「経済」「自然環境」という3つのテーマを中心に、著者が世界を旅し、見聞したトピックを書き綴った壮大なコラムだ。

あまりに多くのエピソードがつめこまれており、まさに世界の縮図が 1 冊の本となったところ。

きまじめなニュース番組のように、彼がみてきたこと、インタビューを通じて話し聞いたことが、次から次へと披露される。ころころと話題や場所が変わっていくため、全編を読み通すのは楽ではなく、キーワードだけをざっと拾ってページをめくった部分も多い。

前半は、主にテクノロジーの加速度的な進歩の話。「ムーアの法則」はもはや正しいとは言い切れない状況ではあるが、機械学習におけるブレイクスルーなどソフトウェアの革新もあいまって、まだまだ変化の勢いはとまらないことを、伝える。

後半は、その変化に対して、人間はどのようにキャッチアップしていくべきなのかという話。最後の 2 章で、彼の故郷であるミネソタ州セントルイスにおける共同体の話が延々と書き綴られるが、特に興味はかき立てられなかった。グローバルで起きている刺激的なエピソードをたっぷりきかされたあとに、アメリカの片田舎の話をされても、ミネソタになんの縁もゆかりもない私には退屈だった。

著者が言わんとしていることをあえてまとめてみると、

  • テクノロジーにより、めまぐるしすぎるほどの変化が現在進行形で進捗している
  • 経済も環境問題も地球規模の問題となっており、国際的に開かれた政治体制の確立が急務である
  • 現在は移行の時期。ひずみが生ずるにちがいないが、必ずや今のテクノロジーは個人の力となり、世界中の人類に平等な教育と報酬の機会をあたえるだろう
  • (ミネソタでみられるような)多様性を受け入れ、移民に寛容で健全な地域社会を築くことが大切である

2017 年 7 月 27 日、書評の時点ではまだ邦訳は出ていない。今年中には出るのではないかと思われるので、日本語で読みたい人はもう少しお待ちを。

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