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原題は、“Altered Traits”。瞑想によって脳は変成するのかという疑問に対して、大量の科学的知見を元になるべく正確にまとめあげようとしたレポート。 何十年にもおよび、ダライ・ラマやフランシスコ・ヴァレラという一流の人たちを巻き込み、冷静に瞑想の効果を見極めようとした本書は、本当に瞑想の科学の決定版といえるだろう。文句なしの★5つ。

結論から言えば、瞑想は脳を変成させる。だ。特に、瞑想を44000時間以上こなしているヨギの達人になると、瞑想中に不安をかき立てるような音を出しても、ほとんどピクリとも反応しないようなのだ。扁桃体(Amydgala)が活性化しない。これは瞑想中だけでなく日常においても見いだされるようだ。

研究の成果としてはもう少し心細いものにはなるが、たとえ2-3ヶ月であっても続けていれば、脳のデフォルトモードでの活動に変化が見られるらしい。いわゆるマインドフルネスという段階だ。その次のステップはだいたい10000時間ほどの瞑想経験があるひとたち。最後のステップにいたるには、チベットで3年の修行を必要とするなどとても自分にはまねできない世界だ。

ともかく、程度の差はあれ瞑想は脳の活動に影響を与えることが科学的に立証されたのは本当に良かった。あまりに情報量が多く読み飛ばしたところも多いが、これからも瞑想を続けるなかで、折に触れて参照したい本である。

ちなみに、この本は瞑想の指南書ではないし、特定の瞑想のやり方に肩入れをしているわけでもないので、この本を読んでも瞑想が上手にできるようになるわけではない。むしろ、著者二人も含めて、登場する人たちはほとんどがガチ勢で、インドやチベットに渡って修行しちゃう人たちであり、ヴィパッサナー瞑想法は良く言及されているが、ベテランにいたるにはヴィパッサナー瞑想を師について学ぶのがいいだろうとは書かれており、本やオンラインでカジュアルに学ぶのではなく、人生をかけて瞑想を続けることが説かれている。

最後に、本文中でなんども、共著者であるリチャード・J・デビッドソンの研究が紹介されるのだが、そのたびに「リッチー」と繰り返されていて、あぁまたリッチーかと興ざめしてしまった。そこは普通に、デビッドソンでよかったのだと思うが、なぜだか著者たちは自分たちをニックネームで呼び合う関係を読者に印象づけたかったようだ(そういう文化なので英語で読めば違和感はないのだろうが)。

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